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金澤韻(かなざわ こだま)

現代美術キュレーター。彼女の興味は、時代・社会の変化とともに人々の認識がいかに変容するものか、という点にある。それは人間に精神的な困難をもたらす無意識の枠組みをどのように捉えうるかという命題につながっている。トピックとして、日本の近現代における文化帝国主義、グローバリゼーション、そしてニューメディアアートを扱い、国内外で30以上の展覧会を企画してきた。

東京芸術大学大学院美術研究科、および英国王立芸術大学院大学(RCA)現代美術キュレーティングコース修了。熊本市現代美術館など公立美術館での12年の勤務を経て、2013年に独立。2017年4月から十和田市現代美術館の学芸統括としても活動。

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大学では7世紀から現在に至る日本文学を専攻。卒業論文では、20世紀初頭にロンドンへ留学したのち近代化の波の中で煩悶する日本の人々の姿を描いた小説家、夏目漱石を取り上げた。その研究を通して、日本における最初の本格的な西洋文化の到来と、引き起こされた文化的アイデンティティの危機について論じた。この経験により日本の文化的帝国主義に強い興味を持つようになる。

東京藝術大学の修士課程では美術史と美術理論を学ぶ。特に市井の人々が近代化以後どのように西洋文化を受け入れていったのかについて興味を持った。そのため美術教育史を研究し、人々が西洋的価値を受け入れるためにどのような葛藤を抱いたかを追った。博士課程では、漫画表現が長い間戦後日本の教育現場である種タブーとされた状況に注目し、研究と考察を深めた。それは日本における文化帝国主義の痕跡を見つめる作業だった。

この大学院における5年間の課程は作家になるための訓練を含むものであり、その後のキュレーターとしての実践に美的かつ実務的な側面への理解をもたらした。

熊本市現代美術館ではアシスタント・キュレーターとしてマリーナ・アブラモヴィッチ、アン・ハミルトン、草間彌生、横尾忠則といった国際的に著名な作家の個展を含む、ほぼすべての展覧会のキュレトリアル・チームに加わった。また地元作家の展覧会や特定のテーマを持ったコレクション展のキュレーションも行った。300回以上のギャラリー・ツアー、150回以上のイベント、そして50回以上のワークショップを通して、来館者・地域の人々と親密な関係を結び、現代美術の振興に尽力。そして時代の先端を行く国際的な作家たち及び若い世代の作家たちとの仕事を通して、常に現代美術をどのように伝えるかという課題に対し真摯に取り組んだ。

川崎市市民ミュージアムでは漫画部門担当の学芸員として漫画の展覧会と収集活動に携わった。また一方では、コレクション展、異ジャンルが混交した展覧会、現代美術展、また現代美術と他のジャンルが混ざった展覧会を毎年平均2回行った。これらの仕事を通して、日本の17世紀から現在に至る漫画文化の知識を深め、また映像、メディア・アート、写真、現代美術といった異なるフィールドを横断する数多くのコラボレーションを経験した。この経験がいわゆるファイン・アートの枠内に留まらない、多様な視点を獲得することに貢献している。

2013年からインディペンデント・キュレーターとして国内外で展示を企画。またこれまで30冊以上のカタログ等の出版に携わっている。